補助ナビ

賃上げ要件の詳細と未達時の返還リスク|新事業進出・ものづくり補助金(第1次)

監修:松下 大中小企業診断士/認定経営革新等支援機関株式会社SMARTコンサルティング
最終更新:2026/7/21
賃上げ要件を満たせないと補助金の返還を求められる可能性があります

この補助金には「一人当たり給与支給総額の年平均成長率」と「事業場内最低賃金水準」の2つの賃上げ要件があり、どちらも事業計画期間(補助事業終了後3〜5年)を通じて毎年達成し続ける必要があります。未達の場合は補助金の一部または全額の返還が求められます。さらに補助上限額の引き上げを狙う「賃上げ特例」を適用した場合は、特例分の補助金全額が返還対象になるリスクもあります。制度の内容は公募回ごとに変更される場合があるため、必ず最新の公募要領をご確認ください。

【基本要件①】一人当たり給与支給総額:年平均成長率の目標設定と返還ルール

補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率(CAGR・複利計算)について目標値を自社で設定し、計画最終年度に達成する必要があります。未達の場合の返還額は、補助金交付額に「1 −(最終年度の実績年平均成長率÷目標値)」を乗じた額とされています。特に注意が必要なのは、最終年度の年平均成長率がゼロまたはマイナスになった場合は補助金の全額返還となる点です。給与支給総額の目標は申請時に確定しますので、達成可能な水準で慎重に設定することが重要です。

【基本要件②】事業場内最低賃金:地域別最低賃金+30円以上を毎年維持

補助事業を実施する事業場の最も低い賃金(事業場内最低賃金)が、その都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準を、事業計画期間中の毎年維持することが必要です。複数の事業場で補助事業を実施する場合は、最も賃金が低い事業場の水準が基準になります。毎年の事業化状況報告時に賃金台帳等の提出が求められ、基準を下回った年度については、補助金交付額を事業計画期間の年数で割った額の返還を求められます。ただし付加価値額が増加していない場合は扱いが異なる可能性があるため、詳細は公募要領でご確認ください。

【賃上げ特例】補助上限を引き上げる特例の適用条件と返還リスク

賃上げ特例を申請すると補助上限額が引き上げられますが、要件未達の場合は「特例による引き上げ分の補助金交付額の全額」を返還しなければなりません。特例の適用には、基本要件である給与支給総額と事業場内最低賃金の両方の要件に加え、事業場内最低賃金の基準値(地域別最低賃金+30円)をさらに20円上回る、合計で地域別最低賃金より50円以上高い水準にすることが求められます。申請時に賃上げ計画を電子申請システムに入力し、その妥当性が審査されます。また、故意または重大な過失によって給与支給総額や事業場内最低賃金を引き下げることで要件を達成しようとする行為は認められません。

【賃上げ特例】適用できないケースに注意

賃上げ特例には適用できない場合があります。公募要領に明記されているものとして、①各申請枠の補助上限額に達しない場合、②革新的新製品・サービス枠で地域別最低賃金引上げ特例を申請する事業者、③革新的新製品・サービス枠およびグローバル枠で申請する再生事業者、の3つが挙げられています。自社の申請枠や状況が該当しないか、事前に公募要領で確認することが必要です。

【地域別最低賃金引上げ特例】さらに補助率を引き上げる追加特例

賃上げ特例とは別に「地域別最低賃金引上げ特例」という制度もあり、こちらは補助率の引き上げ(1/2→2/3)が受けられます。適用には、2024年10月から2025年9月の間に「当該期間の地域別最低賃金以上かつ2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上となる月が3か月以上あることが必要です。応募申請時に指定様式と賃金台帳の提出が求められます。この特例を活用する場合は、基本要件の一部が変更になる可能性があるため、公募要領で詳細をご確認ください。

返還を避けるための実務上のポイント

賃上げ要件は補助金交付後も長期にわたって継続する義務です。経営者として意識しておきたい点は3つあります。①申請時の目標値設定は「達成できる現実的な水準」にすること(高い目標は審査加点になる可能性がある一方、未達リスクも高まります)、②事業場内最低賃金の管理は事業実施場所ごとに行い、パート・アルバイトを含む最低賃金水準の従業員を把握しておくこと、③事業化状況報告時には賃金台帳等の提出が必要なため、年度ごとに記録を整備しておくことです。具体的な管理方法については、認定経営革新等支援機関などの専門家に相談することをお勧めします。

新事業進出・ものづくり補助金の申請、専門家に無料で相談する

中小企業診断士・認定経営革新等支援機関が、制度選びから採択可能性まで無料でアドバイスします。

よくある質問

Q.給与支給総額の「一人当たり」とは、どのように計算するのですか?

本ページ執筆時点で確認できた公募要領には具体的な計算式の詳細が記載されていません。給与支給総額を従業員数で割ったものと考えられますが、対象となる従業員の範囲や計算時点など詳細は公募要領本文でご確認ください。

Q.事業場内最低賃金が基準を下回った年が1年あった場合、全額返還になりますか?

事業場内最低賃金要件の未達については、補助金交付額を事業計画期間の年数で割った額の返還が1年ごとに求められる仕組みです。全額返還ではなく年割りの返還となりますが、複数年にわたって未達が続けば累積して返還額が増えます。ただし付加価値額の状況によって扱いが異なる場合があるため、詳細は公募要領でご確認ください。

Q.賃上げ特例の「引き上げ分の補助金交付額」とは具体的にいくらですか?

特例適用による補助上限額の引き上げ幅は従業員規模等によって異なり、本ページ執筆時点で確認できた公募要領の範囲では具体的な金額が確認できません。枠ごとの補助上限額については公募要領でご確認ください。返還額は「特例による引き上げ分の補助金交付額の全額」が上限(実際に交付された金額が上限)とされています。

Q.賃上げ特例を申請したが審査で不採択になった場合、どうなりますか?

賃上げ特例の適用は申請内容の審査を経て決定されます。不採択の場合は特例が適用されないため、補助上限額の引き上げは受けられませんが、基本の補助要件(給与支給総額・事業場内最低賃金)は引き続き適用されます。詳細な扱いは公募要領でご確認ください。

Q.地域別最低賃金引上げ特例の対象期間(2024年10月〜2025年9月)は過去の実績で判断するのですか?

公募要領の記載では「2024年10月から2025年9月までの間」の雇用状況を基準としており、応募申請時に指定様式と賃金台帳の提出が必要とされています。すでに該当期間は経過していますので、過去の賃金台帳を確認して要件に該当するかどうか判断することになります。

Q.補助事業を実施する事業場が複数ある場合、どの事業場の最低賃金が基準になりますか?

複数の事業場で補助事業を実施する場合、その中で最も事業場内最低賃金が低い事業場の水準が判定基準になります。事業場ごとに賃金水準を管理し、最低賃金の従業員がいる事業場の賃金に特に注意が必要です。

Q.この補助金は旧「ものづくり補助金」と同じ制度ですか?

別制度です。2026年度(令和8年度)に新設された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、旧「中小企業新事業進出補助金」と旧「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」を統合した後継制度ですが、制度設計は異なります。旧制度の申請経験があっても、本制度の公募要領を改めて確認することが必要です。

Q.2026年度以降も同じ要件が続くのですか?

補助金制度は公募回ごとに要件・補助率・補助上限額などが変更されることがあります。本解説は第1次公募要領に基づいており、将来の公募回への適用を保証するものではありません。常に最新の公募要領をご確認ください。

出典:新事業進出・ものづくり補助金 事務局サイト公募要領 第1次 p.15公募要領 第1次 p.8公募要領 第1次 p.9公募要領 第1次 p.11公募要領 第1次 p.12

新事業進出・ものづくり補助金の関連記事

他の補助金の同テーマ解説

監修:松下 大(中小企業診断士/認定経営革新等支援機関)

公募要領等の一次情報に基づき作成。最終更新:2026/7/21