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ものづくり補助金 第23次:賃上げ要件の詳細と未達時の返還リスク完全解説

監修:松下 大中小企業診断士/認定経営革新等支援機関株式会社SMARTコンサルティング
最終更新:2026/7/16
賃上げ要件は「義務」であり、未達なら補助金の一部または全額を返還しなければならない

ものづくり補助金第23次では、採択後の事業計画期間(3〜5年)を通じて①1人あたり給与支給総額の増加と②事業所内最低賃金の引上げという2つの賃上げ要件を継続的に達成し続ける義務があります。どちらも未達の場合は補助金の返還が発生します。さらに「大幅な賃上げ特例」で補助上限を引き上げた場合は、返還リスクがより大きくなります。申請前に長期的な賃上げ余力を冷静に見極めることが不可欠です。

基本要件①:1人あたり給与支給総額の引上げ——年平均成長率がゼロ・マイナスなら全額返還

事業計画期間の最終年度における1人あたり給与支給総額の年平均成長率がプラスであることが求められます。成長率がゼロまたはマイナスになった場合は、補助金の全額返還が義務付けられています。算出にあたっては、昇給・減給・残業時間の増減など給与が変動するすべての従業員が対象になります。残業代の増減や欠勤控除なども影響するため、将来の給与変動要因を事前に十分に試算してから目標値を設定することが重要です。

基本要件③:事業所内最低賃金の引上げ——毎年3月末に達成できなければ年割返還

補助事業の主たる実施場所における最も低い賃金(事業所内最低賃金)を、毎年、その都道府県の地域別最低賃金より30円以上高い水準に保つことが必要です。目標値は申請者が自ら設定し、交付申請時までに従業員へ表明しなければなりません。未達が生じた年がある場合の返還額は「補助金交付額 ÷ 事業計画期間の年数」です。ただし①付加価値額が増加しておらず、かつ当該事業年度の営業利益が赤字の場合、②天災など事業者の責めに帰さない理由がある場合、③再生事業者である場合は返還が免除されます。また従業員への目標値の表明自体が行われていなかった場合は、交付決定の取消しおよび全額返還となります。

大幅な賃上げ特例:補助上限引上げの仕組みと適用条件

大幅な賃上げに取り組む事業者は、従業員規模に応じて各申請枠の補助上限額を引き上げることができます。引上げ幅は従業員1〜5人で最大100万円、6〜20人で最大250万円、21〜50人および51人以上でそれぞれ最大1,000万円です。ただし適用できない場合があります。具体的には①各申請枠の補助上限額にすでに達していない場合、②再生事業者、③最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例を申請している事業者は、この特例を利用できません。特例を申請する場合は「特例1人あたり給与支給総額目標値」と「特例事業所内最低賃金目標値」の両方を設定・達成する必要があります。

大幅な賃上げ特例の未達時返還——通常要件より計算が複雑でリスクが大きい

特例の目標値(給与支給総額または事業所内最低賃金のいずれか)を1つでも達成できなかった場合、返還額の計算式は次のようになります。まず補助上限額の引上げ分(補助上限引上げ額)を全額返還した上で、さらに「補助金交付額から補助上限引上げ額を差し引いた残額 × 未達成率」を加算した合計額を返還しなければなりません。未達成率の採用ルールとして、両方の目標が未達の場合は達成度が高い方の目標値の未達成率を用い、片方だけ未達の場合は達成できなかった目標値の未達成率を用います。また事業計画期間最終年度の1人あたり給与支給総額の年平均成長率がゼロまたはマイナスになった場合は、補助金の全額返還となります。

最低賃金引上げ特例との関係——大幅賃上げ特例と併用不可

補助率を引き上げる「最低賃金引上げに係る補助率引上げの特例」と、補助上限額を引き上げる「大幅な賃上げに係る補助上限額引上げの特例」は同時に申請できません。また最低賃金引上げ特例を適用した場合は、基本要件③(事業所内最低賃金水準要件)が適用除外となります。自社の状況に合わせて、どちらの特例を活用するかを慎重に選択してください。

申請前に確認すべき実務的チェックポイント

賃上げ要件を確実に達成するために、申請前に以下を確認することを推奨します。①現在の1人あたり給与支給総額を正確に把握し、3〜5年後の目標値が現実的に達成可能かをシミュレーションする。②補助事業の主たる実施場所の都道府県別最低賃金を確認し、30円以上の上乗せ水準を毎年維持できるかを検討する。③大幅賃上げ特例を申請する場合は、通常の基本要件よりも高い目標値の設定が必要になるため、返還リスクも増すことを十分に認識する。④目標値を決めたら交付申請時までに従業員へ書面等で表明しておく(表明がなければ交付決定取消しの対象)。これらの確認には認定経営革新等支援機関への相談も有効です。

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よくある質問

Q.「1人あたり給与支給総額」の算出対象はどの従業員ですか?

昇給・減給・残業時間の増減など給与変動がある従業員もすべて算出対象に含まれます。正社員だけでなく、これらの変動要因がある従業員も含めて算出するよう、公募要領に明記されています。具体的な集計方法の詳細は公募要領でご確認ください。

Q.事業所内最低賃金の「事業所」とはどこを指しますか?

ここでいう「事業所」は「補助事業の主たる実施場所」を指します。複数の拠点がある場合でも、補助事業を主に実施する場所における最も低い賃金が対象となります。主たる実施場所の考え方については、公募要領p.7の記載に従って判断してください。

Q.事業所内最低賃金目標が未達になっても返還が免除されるケースはありますか?

はい、3つのケースで返還が免除されます。①付加価値額が増加しておらず、かつ当該事業年度の営業利益が赤字である場合、②天災など事業者の責任に帰さない理由がある場合、③再生事業者である場合です。ただし免除の判断は事務局が行いますので、該当すると思われる場合は速やかに事務局へ相談することを推奨します。

Q.大幅賃上げ特例の返還計算が複雑ですが、具体的にどう計算しますか?

返還額は「補助上限引上げ額の全額」+「(補助金交付額-補助上限引上げ額)× 未達成率」の合計です。未達成率は、両方の目標が未達の場合は達成度が高い方の未達成率を、片方だけ未達の場合は未達の方の未達成率を使います。計算式の詳細は公募要領p.24をご確認ください。

Q.大幅賃上げ特例を申請したが、1人あたり給与支給総額の成長率がゼロになってしまった場合は?

事業計画期間最終年度における1人あたり給与支給総額の年平均成長率がゼロまたはマイナスになった場合は、特例の適用有無にかかわらず補助金の全額返還となります。これは大幅賃上げ特例にも適用される最も厳しいペナルティです。

Q.最低賃金引上げの補助率引上げ特例と大幅賃上げ補助上限引上げ特例を同時に申請できますか?

できません。この2つの特例は併用不可とされています。自社の資金計画や賃上げ余力に応じてどちらか一方を選択する必要があります。選択を誤ると返還リスクにつながりますので、事前に専門家と相談することをお勧めします。

Q.従業員への目標値の「表明」はどのような形で行う必要がありますか?

交付申請時までに従業員等に対して目標値を表明することが必要です。表明の具体的な方法(書面・掲示・説明会など)については公募要領に詳細が記載されていないため、公募要領で要確認です。表明が確認できない場合は交付決定の取消しと全額返還の対象となるため、記録として残る形での表明が望ましいと考えられます。

Q.第23次の申請期間と今後の制度変更予定を教えてください。

第23次の受付期間は2026年2月6日〜2026年5月8日です。なお、2026年度以降にものづくり補助金は中小企業新事業進出補助金と統合され「新事業進出・ものづくり補助金」へ再編される予定です。補助金制度は公募回ごとに要件・金額・スケジュールが変更されることがあります。必ず最新の公募要領および事務局の公式サイトで内容をご確認ください。

出典:ものづくり補助金 事務局サイト公募要領 第23次 p.23公募要領 第23次 p.24公募要領 第23次 p.9公募要領 第23次 p.20公募要領 第23次 p.22

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監修:松下 大(中小企業診断士/認定経営革新等支援機関)

公募要領等の一次情報に基づき作成。最終更新:2026/7/16