補助ナビ

GXサプライチェーン補助金:補助対象経費と対象外経費の詳細規定

監修:松下 大中小企業診断士/認定経営革新等支援機関株式会社SMARTコンサルティング
最終更新:2026/8/18
補助対象経費の全体像:何が使えて何が使えないのか

GXサプライチェーン補助金(正式名称:脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金)の補助対象経費は、①設備費、②建物等取得費、③システム購入費の三区分に整理される。このうち設備機械装置の購入(改造等を含む)は必須要件であり、建物や情報システムだけでは申請できない。さらに事業実施場所は日本標準産業分類が定める製造業施設(工場)に限定され、オフィスや研究所単独での申請は認められない。交付決定日より前の発注・契約は原則として対象外だが、公募期間中に限り事前着手の届出制度が利用できる。制度・要件は公募回ごとに変更されるため、最新の公募要領で必ず確認されたい。

設備費:定義・範囲・据付工事の扱い

設備費とは、補助対象施設(製造業施設=工場)で使用する設備機械装置の購入および据付けなど、当該機械設備を稼働させるために必要な作業に要する経費を指す。令和6年度第二回公募要領では「購入及び据付け等当該機械設備を稼働させるために必要な作業に要する経費」と規定されており、設備本体だけでなく配線・配管・試運転費用も含め得る。また、自社従業員が据付作業に関与する場合は当該労務費も設備費として計上可能とされている点が特徴的だ。これは通常の中小企業向け補助金では認められないケースが多い取扱いであり、内製化を重視するメーカーにとって有利な規定といえる。一方、「建物と切り離すことのできない附帯設備」は原則として建物等取得費に区分する必要があり、設備費と建物等取得費の区分が実務上の論点となる。具体的には空調・電力幹線・消防設備など建物の一部をなす設備は建物等取得費への計上が求められる。設備費は三区分の中で唯一の必須要件であり、建物のみ・システムのみの申請は認められない。GX分野の指定製品(水電解装置、燃料電池、ペロブスカイト太陽電池、浮体式等洋上風力発電設備等)を製造するために必要な設備であることが前提条件となる。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

建物等取得費:投下固定資産額と附帯工事費の二層構造

建物等取得費は、①投下固定資産額と②上記と併せて実施する附帯工事費等の二層構造で定義される。投下固定資産額とは、地方税法第341条に規定する固定資産のうち当該事業の用に供するものの取得等価格の合計額(消費税および地方消費税を除く)を指す。新設・建て替え・リフォームのいずれも対象に含まれており、既存工場の大規模改修にも活用できる。ただし、ここで重要な除外規定がある。「土地」および「オフィス用建物の取得費」は投下固定資産額に含まれないと公募要領に明記されており、製造業施設として使用しない部分の建物費用は補助対象から外れる。附帯工事費等は建物取得と一体として実施される工事費を指すが、既存建物・設備機械装置の「撤去費」は対象外経費として明示されているため、既存施設の解体費用は切り分けて計上する必要がある。また既存設備機械装置の移設費も対象外である。建物単独での申請は認められず、必ず設備費との組み合わせが必要な点に留意されたい。建物と切り離せない附帯設備(例:大型クレーン軌条、特殊床)は設備費ではなく本区分に計上することが求められ、この区分判断が実務上の重要ポイントとなる。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

システム購入費とその限定的な位置づけ

システム購入費は「間接補助事業の実施に必要なソフトウェアの購入費」と定義されており、三区分の中では最も範囲が限定的だ。製造実行システム(MES)、生産管理システム、品質管理ソフトウェアなど、補助対象製品の製造に直接必要なソフトウェアが想定される。令和7年度補正事業の公募要領では「設計費」が対象経費として追加されており、公募回ごとに対象経費の範囲が拡張される可能性がある点に注意が必要だ。令和6年度第二回公募においては設計費は対象経費として明示されていないが、交付決定日より前に発生した設計費は「交付申請を行う上で必要となる基本設計費用等も含む」として対象外経費の例示に挙げられており、実務上の注意点となっている。なお、汎用性があり目的外使用になり得るコンピュータやプリンタの購入費は対象外として明示されている。製造ラインに組み込まれた産業用コンピュータは設備費として計上できる可能性があるが、汎用PCと区別して説明できる根拠の整理が必要となる。支払方法については、補助金の支払は原則として間接補助事業終了後の精算払となっており、事業期間中のキャッシュフロー管理が経営課題として浮上する。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

工場要件:日本標準産業分類の製造業施設という場所制限

本補助金の対象経費が認められる事業実施場所は、日本標準産業分類に掲げる「製造業」の用に供される施設、すなわち工場に限定される。この場所要件は補助対象経費の認定において根本的な制約となる。例えば、同一法人が製造工場と研究開発施設を隣接して運営している場合でも、研究開発施設部分の建物費用や設備費は補助対象外となりうる。製造業施設の判定には日本標準産業分類の定義が基準となるが、GX分野の製品製造を目的として新設・改修する工場であれば、本要件の充足は基本的に問題ないケースが多い。一方、物流倉庫・管理棟・研究棟については製造業施設への該当性を慎重に判断する必要がある。事業実施場所は国内に限定されており(日本国内において登記された法人で国内に事業実施場所を有することが応募要件)、海外拠点での設備投資は本補助金の対象外となる。積水化学工業が令和6年度第二回で取得した補助金交付額は約1,572.5億円(補助対象経費3,145億円に対し補助率1/2)に達しており、国内工場での大規模生産拠点整備を前提とした設計がなされている。製造業施設要件への適合性は申請前に自社の工場区分を整理して確認することが不可欠だ。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

交付決定日前着手の禁止と事前着手届出制度の使い方

本補助金では「原則として交付決定後、事業開始(契約・発注)が可能」とされており、交付決定日より前に発注・購入・契約等を実施したものは補助対象外となる。この制限は発注先への内示にも及び、「発注先への内示も発注行為とみなす」と公募要領に明記されている。採択通知後であっても交付決定が下りるまでは発注できない点に注意が必要だ。ただし例外措置として、公募期間中(令和6年度第二回は令和6年9月17日〜令和6年10月31日正午)に限り、事前着手の届出を提出し受理された場合には、受理通知に記載の「事前着手開始日として認める日」(令和6年9月17日以降)以降に発生した経費を補助対象として認める場合がある。この制度は公募期間と受付期間が一致しており、公募開始前からの準備が前提となる。また、基本設計費用等も「交付申請を行う上で必要となる」場合でも、交付決定前に発注・支払いされたものは原則対象外経費に分類される。令和6年度第二回の交付申請期限は令和7年2月28日、事業終了(建物・設備の取得完了および全費用支払い)の期限は遅くとも令和11年2月28日とされている。スケジュール管理の失敗が採択後の補助金返還リスクに直結するため、事業計画の時系列整理は採択前から着手すべきだ。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

対象外経費の具体例:人件費・撤去費・中古品・汎用品

公募要領が明示する対象外経費の主な例を整理する。第一に、申請事業者および共同申請者の人件費は原則対象外だが、「設備費に関連する労務費」は設備費として認められる。この区分線は実務上グレーゾーンになりやすく、据付作業に従事した自社従業員の賃金は計上可能だが、プロジェクト管理・申請業務担当者の人件費は計上不可と解釈される。第二に、既存建物・設備機械装置の撤去費および既存設備機械装置の移設費は明示的に対象外とされている。工場の建て替えにあたって既存設備を撤去する費用は自社負担となる。第三に、汎用性があり目的外使用になり得るものとして、コンピュータ・プリンタなどの購入費が例示されている。製造ラインと一体化した専用機器との区別を明確にする必要がある。第四に、価格設定の適正性が明確でない中古品の購入費も対象外だ。中古設備の活用を検討している場合は価格の根拠を明示できる書類の整備が前提条件となる。また、調達にあたっては一般競争入札が原則であり、困難な場合は3者見積の取得が求められる。随意契約が認められる条件は限定的であり、発注先の選定プロセスを記録として保存することが精算払の審査における重要な確認ポイントとなる。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

リース会社との共同申請:スキームと留意点

本補助金では共同申請が認められており、リース会社との共同申請も制度上は排除されていない。主要要件の一つとして「共同申請・リース会社利用可」とされているが、具体的な共同申請の条件・申請方法の詳細は公募要領で要確認だ。一般的な間接補助金スキームにおいてリース会社が共同申請者となる場合、設備の法的所有者(リース会社)と設備使用者(製造事業者)の役割分担、補助金の帰属関係、リース料の補助対象経費への計上可否などが論点となる。本事業の公募要領では「申請事業者及び共同申請者の人件費(設備費に関連する労務費を除く)」が対象外とされており、共同申請者も経費の申請者となり得ることが示唆されている。また、「事業終了後の建物・設備等の管理・運営等に責任を持ってあたることができる法人」が間接補助事業者の要件であるため、リース会社が共同申請する場合は責任分担の明確化が求められる。補助金の支払は精算払が原則であり、リース会社が立て替えた設備費用の精算・補助金受領の流れを事前に整理しておく必要がある。また、収益納付については「間接補助事業の事業化により収益を得られたと認められる場合であっても収益納付は求めない」と明示されており、事業化後の収益についての懸念は不要だ。リースを活用した申請の詳細スキームは事務局への事前確認を強く推奨する。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

補助率と野心的取組要件:対象経費規模が決定的に重要な理由

補助対象経費の認定範囲は補助率と組み合わさって実際の受取額を決定するため、経費区分の正確な把握が資金計画の精度に直結する。原則補助率は大企業1/3以内・中小企業等1/2以内で限度額は設定されていない。ただし、①国内のいずれにも商用目的の生産設備が存在しない製品を生産する、②完成品または完成品を構成する主たる部品である、③市場投入の時期・量・性能等において国際競争力を十分に有すると認められる、の全てを満たす場合には大企業1/2以内・中小企業等2/3以内へ引き上げられる。積水化学工業の事例では補助対象経費3,145億円に対し補助率1/2が適用され、約1,572.5億円の交付額となっている。また公募要領は「審査の結果、希望する補助率を下回る可能性がある」と明記しており、補助率は申請時の希望通りになるとは限らない。対象経費の算定において重要なのは、土地代や対象外経費を含まない純粋な補助対象経費額を精緻に積み上げることだ。例えば工場新設で土地取得費が発生する場合、その金額は補助対象経費には含まれず補助率の計算ベースから外れる。IRR(内部収益率:投資の収益性を示す指標)が補助なしでは投資判断基準を下回ることを示す財務分析も審査要素であり、補助対象経費の規模設定は事業計画全体の論理的整合性と連動させる必要がある。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認。

GXサプライチェーン補助金の申請、専門家に無料で相談する

中小企業診断士・認定経営革新等支援機関が、制度選びから採択可能性まで無料でアドバイスします。

よくある質問

Q.設備機械装置の購入が「必須」とはどういう意味ですか?建物のみでの申請はできないのですか?

公募要領では「設備機械装置の購入(改造等含む)は必須」と明記されています。これは建物等取得費やシステム購入費だけでは申請できず、必ず設備費を含む必要があるという意味です。例えば工場建屋の新設費用のみを申請することはできません。ただし設備費を申請した上で建物等取得費・システム購入費を追加することは可能です。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

Q.既存工場のリフォームも建物等取得費の対象になりますか?

令和6年度第二回公募要領では建物等取得費について「新設、立て替え、リフォーム含む」と明示されており、既存工場の改修費用も対象に含まれます。ただし既存設備機械装置の撤去費および既存設備機械装置の移設費は対象外経費として明示されています。リフォームに伴い既存設備の撤去が必要な場合、その撤去費用は補助対象経費に計上できない点に留意が必要です。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

Q.交付決定前に基本設計を発注してしまいました。この費用は対象になりますか?

原則として交付決定日より前に発注・契約等を実施したものは補助対象外です。公募要領では「交付申請を行う上で必要となる基本設計費用等も含む」として交付決定前発注の対象外経費例に明示されています。ただし公募期間中(令和6年度第二回は2024年9月17日〜10月31日正午)に事前着手の届出を行い受理された場合には、受理通知に記載の「事前着手開始日として認める日」以降の経費が対象になる場合があります。既に発注済みの場合は事務局に個別相談することを強く推奨します。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

Q.自社従業員が設備の据付作業を行った場合の労務費は計上できますか?

設備費の定義には「自社の労務費を含む」と明記されており、自社従業員が設備機械装置を稼働させるために必要な据付作業等に従事した場合の労務費は設備費として計上可能です。一方、プロジェクト管理・申請業務等に係る人件費は「申請事業者及び共同申請者の人件費(設備費に関連する労務費を除く)」として対象外とされています。設備費に関連する労務費と一般管理人件費を区別できる記録(作業日報・タイムシート等)の整備が実務上重要となります。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

Q.中古設備を購入して申請することは可能ですか?

「価格設定の適正性が明確でない中古品の購入費」は対象外経費として例示されています。裏を返せば、価格設定の適正性が明確に説明できる中古品は認められる可能性があります。中古設備の活用を検討する場合は、市場価格との比較、第三者による査定書など価格の根拠を明示できる書類を整備することが前提条件となります。なお、調達にあたっては一般競争入札の原則(困難な場合は3者見積)が適用されます。詳細は事務局に事前確認することを推奨します。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

Q.土地の取得費用は補助対象経費に含まれますか?

公募要領に「本事業の対象経費である投下固定資産額には、土地やオフィス用建物の取得費は含まれない」と明記されています。工場新設に伴う土地購入費は補助対象外であり、補助率を計算する際のベースとなる補助対象経費には算入できません。工場建設の総投資額に土地代が含まれる場合は、土地代を除いた部分のみが補助対象経費の計算基礎となります。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

Q.補助金はいつ受け取れますか?事業期間中の資金繰りはどう考えればよいですか?

補助金の支払は「原則、間接補助事業終了後の精算払」とされています。令和6年度第二回では事業終了期限が遅くとも令和11年2月28日(2029年2月)とされており、数百億円規模の投資を行う場合は事業期間中のつなぎ資金の確保が不可欠です。中間払いの可否・条件については公募要領では明示されておらず、詳細は事務局への確認が必要です。リース会社との共同申請スキームを検討する場合も、精算払を前提とした資金計画の設計が求められます。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

Q.研究開発施設や管理棟の建設費用も補助対象になりますか?

補助対象の事業実施場所は日本標準産業分類に掲げる製造業の用に供される施設(工場)に限定されています。また「オフィス用建物の取得費は含まれない」と明記されています。研究開発専用施設や管理棟については、製造業施設への該当性が認められない場合は補助対象外となる可能性が高いです。製造工場と一体として整備される施設については、製造業施設としての利用実態・設計内容を踏まえて個別に判断されるため、事前に事務局へ相談することを推奨します。制度・要件は公募回ごとに変更されるため最新の公募要領で要確認ください。

出典:GXサプライチェーン構築支援事業 事務局サイト(令和6年度)GXSC補助金事務局(令和7年度補正)令和7年度補正 事業Ⅰ公募要領

GXサプライチェーン補助金の関連記事

他の補助金の同テーマ解説

監修:松下 大(中小企業診断士/認定経営革新等支援機関)

公募要領等の一次情報に基づき作成。最終更新:2026/8/18