補助ナビ

GXサプライチェーン補助金 採択実績の全記録:全公募回の採択企業・交付額・品目から見る傾向分析

監修:松下 大中小企業診断士/認定経営革新等支援機関株式会社SMARTコンサルティング
最終更新:2026/8/18
採択実績が示す「GX補助金の全体像」

GXサプライチェーン補助金(正式名称:脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金)は、令和6年度第一回公募(2024年6月)から令和7年度補正(2026年3月)まで複数回にわたって公募を実施してきた。これまでに公表された採択件数の合計は21件超。補助金交付額(交付申請額)の最大は積水化学工業のフィルム型ペロブスカイト太陽電池案件で約1,572.5億円に達する。一方で応募件数は非公表のため採択率は不明であり、本記事では事実として確認できる採択企業・品目・金額・公表日に基づき、各公募回の実績と傾向を整理する。なお制度・要件は公募回ごとに変更されるため、最新の公募要領で必ず確認されたい。

令和6年度第一回:水電解・燃料電池で9件が採択、先行5件と追加4件の2段階公表

令和6年度第一回公募は2024年6月28日から8月30日正午まで受付を行い、対象品目は水電解装置(完成品・膜・電極・触媒・CCM・MEA等)および燃料電池(完成品・膜・触媒・ガス拡散層等)とされた。採択結果は2段階に分けて公表された。先行公表(2024年11月18日)では5件が発表された。トヨタ自動車(水電解スタック、補助金交付額約16億8,650万円)、カナデビア(旧日立造船、水電解装置PEM型、約24億4,203万円)、デノラ・ペルメレック、SCREENホールディングス、フルヤ金属の5社である。追加公表(2024年12月18日)では4件が加わった。本田技研工業(燃料電池・燃料電池システム、約147億7,967万円)、トヨタ自動車(燃料電池スタック・モジュール、約112億5,461万円)、東レ(水電解装置部素材=電解質膜、約186億6,667万円)、旭化成(電解セル・電解用膜、約114億2,700万円)の4件で、合計9件の採択となった。トヨタ自動車は水電解スタックと燃料電池スタック・モジュールの2件が別々に採択されており、完成品から基幹部材まで幅広い品目が対象になっていることがわかる。東レや旭化成のような素材・膜メーカーも採択されており、サプライチェーン全体をカバーする設計が第一回から明確に現れている。なお交付額は交付申請額を上限とした額であり、実際の補助金額とは異なる可能性がある点に留意が必要だ。

令和6年度第二回ペロブスカイト:積水化学の1,572億円が象徴する大規模投資の実態

令和6年度第二回公募は2024年9月17日から10月31日正午まで受付を行い、対象品目はペロブスカイト太陽電池(完成品・レーザー加工装置)と浮体式等洋上風力発電設備(ブレード・タワー・ナセル・係留索等)に分かれた。ペロブスカイト太陽電池の採択は2024年12月25日に公表され、採択件数は2件。積水化学工業(フィルム型ペロブスカイト太陽電池)の補助対象経費は約3,145億445万円、補助金交付額は約1,572億5,222万5,000円に達した。本事業全体の予算額が4,212億円(令和6年度事業、令和10年度まで)であることを踏まえると、1社で3分の1超の交付額を占める規模感である。補助率の計算式から逆算すると、補助対象経費約3,145億円に対して交付額が約1,572億円であることは補助率1/2に相当し、公募要領が定める「国内に商用生産設備が存在しない・完成品または主要部品・国際競争力を有する」の3要件を全て満たした場合の引き上げ補助率(大企業1/2以内)が適用されたと推測される。もう1件の片岡製作所はレーザー加工装置(中小企業)で採択されており、完成品メーカーを支える製造装置分野からも採択されていることが確認できる。ただし片岡製作所の交付額は公表データに記載がなく、公募要領で要確認となる。

令和6年度第二回浮体式洋上風力:5社が多様な部材で採択、サプライチェーンの裾野を形成

第二回公募の浮体式等洋上風力発電設備分野は2025年1月24日に5件の採択が公表された。東芝エネルギーシステムズ、大島造船所、ナロック、日鉄エンジニアリング、駒井ハルテックの5社である。対象品目はブレード・タワー・ナセル・係留索・アンカー・浮体基礎など複数の部品に分散しており、特定の完成品メーカー1社ではなく、部材・製造サプライチェーン全体を構成する複数の企業が採択されている点が特徴的だ。大島造船所や日鉄エンジニアリングのような重工業・鉄鋼系企業、駒井ハルテックのような構造物メーカーが並ぶことで、浮体式洋上風力という新興分野において国内サプライチェーンを一括して立ち上げる設計が読み取れる。公募要領では完成品以外の部材については「最新の完成品へ採用されることが見込まれるものに限る」という条件が課されており、採択された各社は具体的な商用採用の見込みを審査段階で示した上で認められたことになる。5社それぞれの交付額については公表データに具体的な数値の記載が確認できないため、公募要領や採択一覧PDFで要確認となる。事業期間は2024年9月17日から2029年2月28日まで(令和11年2月28日まで)が間接補助事業の終了期限とされた。

令和7年度:HVDCケーブルに古河電気工業、浮体式にJFEエンジニアリング、ペロブスカイトに中小2社

令和7年度事業(事務局サイト:2025.gxsc-hojo.jp)では複数の事業区分が設けられ、それぞれ採択が公表されている。事業Ⅰ(HVDCケーブル)は2025年8月27日締切で、2025年10月7日に古河電気工業1件が採択公表された。HVDC(High Voltage Direct Current=高電圧直流送電)ケーブルは洋上風力発電の電力を陸上に送る基幹インフラ部材であり、古河電気工業の交付申請額は306億5,903万9,361円(約306.6億円)と大規模な案件となった。事業Ⅲ(浮体式等洋上風力発電設備)は2025年10月6日から11月17日正午まで受付し、2026年1月28日にJFEエンジニアリング1件の採択が公表された。JFEエンジニアリングは国内大手エンジニアリング会社であり、浮体基礎等の生産設備投資が対象と推測されるが、具体的な品目・交付額は公表データの範囲で要確認となる。事業Ⅳ(ペロブスカイト太陽電池)は2025年11月18日締切で、採択一覧のPDF日付2026年2月27日として三星ダイヤモンド工業とチカモチ純薬の2件が公表された。三星ダイヤモンド工業はペロブスカイト製造に関わる装置・部材分野、チカモチ純薬は材料・純薬分野と推測されるが、具体的な品目・交付額は公募要領で要確認となる。なお事業Ⅱ(水電解装置・燃料電池)については2025年11月14日締切で公募が行われたが、採択事業者一覧の公表は本記事作成時点では確認できていない。

令和7年度補正:ベスタス・ジャパンが浮体式ナセル組立で採択、外資系企業初の実績

令和7年度補正事業(事務局サイト:2026.gxsc-hojo.jp)の事業Ⅰ(浮体式等洋上風力発電設備)は2026年3月27日公募開始・5月12日正午締切で実施され、2026年7月10日にベスタス・ジャパン1件の採択が公表された。ベスタス・ジャパンの対象品目は「ナセル最終組立」であり、デンマーク系の大手風力発電メーカーの日本法人が国内で製造拠点を構築する案件となった。令和7年度補正事業Ⅰの予算は全体で約833億円(令和11年度までの国庫債務負担含む)。補助率は原則として大企業1/3以内・中小企業等1/2以内で、野心的な取組と認められる場合は大企業1/2以内・中小企業等2/3以内まで引き上げられる。令和7年度補正事業Ⅰでは令和6年度第二回・令和7年度事業Ⅲで採択済みの同一事業については重複申請が禁止されており、ベスタス・ジャパンはこれらの回で採択歴のない新規申請案件であったことが確認できる。なお製造能力の最低水準目標としてナセルは100基分/年・生産開始年限2030年度が設定されており、採択された事業者はこの水準を達成する計画を持つことが要件となる。ベスタス・ジャパンの交付額については公表データの範囲では確認できないため、公募要領等で要確認となる。

採択実績から読み取れる品目・企業規模の傾向:完成品メーカーと主要部材メーカーが並立

全公募回の採択21件超を品目・企業規模の観点で整理すると、いくつかの傾向が事実として確認できる。まず品目の幅広さとして、完成品(トヨタの燃料電池システム、積水化学のペロブスカイト完成品、ベスタス・ジャパンのナセル)から基幹部材(東レの電解質膜、旭化成の電解セル・電解用膜、古河電気工業のHVDCケーブル)、製造装置(片岡製作所のレーザー加工装置)まで採択されている。公募要領は「完成品以外については最新の完成品へ採用されることが見込まれるものに限る」と明記しており、部材・装置メーカーは商用採用の見込みを具体的に示す必要があるが、実際に採択されている事実がある。企業規模については、大企業(トヨタ自動車、本田技研工業、東レ、旭化成、積水化学工業、古河電気工業等)が中心であるが、中小企業等に分類される片岡製作所も採択されている。審査項目には「民間企業のみでは投資判断が真に困難な事業か(IRR=内部収益率等の経済的基準)」が含まれており、大規模かつリスクの高い設備投資が求められる構造上、大企業案件が相対的に多くなっていると解釈できる。ただし採択率は非公表のため、こうした傾向が応募傾向を反映しているに過ぎない可能性も排除できない。

交付額規模と国産化・量産化への意図:1件あたり数十〜数千億円の幅

採択実績における補助金交付額(交付申請額)のレンジは非常に広い。確認できる最大額は積水化学工業の約1,572.5億円、次いで東レの約186.7億円、本田技研工業の約147.8億円、旭化成の約114.3億円、トヨタ自動車(燃料電池スタック・モジュール)の約112.5億円、古河電気工業の約306.6億円と続く。一方でカナデビアの約24.4億円、トヨタ自動車(水電解スタック)の約16.9億円のように相対的に小規模な案件も採択されており、画一的な「大型案件しか通らない」という読み方は事実の範囲を超える。交付額が大きい案件に共通するのは、いずれも日本国内における商用量産設備の新設・初期化を伴う投資であるという点だ。公募要領が定める補助率引き上げ要件の第1条件「国内のいずれにも商用目的の生産設備が存在しない」は、既存市場への追加投資ではなく国産化・量産化の初期段階に位置する事業に対して、より手厚い補助を設計したものと解釈できる。令和7年度補正の製造能力最低水準(ナセル100基分/年・浮体基礎20基分/年・2030年度までに生産開始)はこの量産化要件を数値で具体化したものであり、2030年に向けた明確な量産計画の提示が採択の実質的な条件になっている。

応募から採択公表までのリードタイムと今後の留意点

各公募回の採択公表タイミングを整理すると、令和6年度第一回は締切(2024年8月30日)から先行公表(2024年11月18日)まで約2.5か月、追加公表(2024年12月18日)まで約3.5か月を要した。第二回はペロブスカイト分が締切(2024年10月31日)から約1.7か月(2024年12月25日)、浮体式分が約2.7か月(2025年1月24日)で公表された。令和7年度事業Ⅰは締切(2025年8月27日)から公表(2025年10月7日)まで約1.4か月と比較的短かった。令和7年度補正事業Ⅰは締切(2026年5月12日)から公表(2026年7月10日)まで約2か月であった。公募要領では面接審査に代表権を有する者の参加が必須とされており、書面審査+面接審査のプロセスが採択審査期間の長さに影響している。2026年8月時点で実施中の公募は令和7年度補正事業Ⅱ(ペロブスカイト太陽電池、2026年6月30日締切)のみで受付は終了しており、新規公募の予告は各事務局サイト・METIページでの確認が必要な状況となっている。事業期間は令和7年度補正では交付決定日から2031年3月31日(令和13年3月31日)まで、令和7年度事業は交付決定日から2029年12月31日(令和11年12月31日)までと設定されており、採択後も長期の事業管理が求められる。なお制度・要件は公募回ごとに変更されるため、最新の公募要領で必ず確認されたい。

GXサプライチェーン補助金の申請、専門家に無料で相談する

中小企業診断士・認定経営革新等支援機関が、制度選びから採択可能性まで無料でアドバイスします。

よくある質問

Q.採択率はどのくらいですか?

応募件数は非公表のため、採択率は公表情報がなく算出できません。確認できるのは採択件数のみです。令和6年度第一回が9件、第二回がペロブスカイト2件・浮体式5件の計7件、令和7年度が確認済みで4件、令和7年度補正事業Ⅰが1件となっています。採択率を推測できる情報は現時点では存在しません。

Q.中小企業でも採択されていますか?

はい。令和6年度第二回では片岡製作所(レーザー加工装置、中小企業)が採択されています。令和7年度事業Ⅳではチカモチ純薬が採択されており、中小企業等に分類される企業の採択実績があります。中小企業等の補助率は原則1/2以内、要件を満たす場合は2/3以内と大企業より高く設定されています。具体的な要件は最新の公募要領で要確認です。

Q.外資系企業は申請できますか?

申請要件は「日本国内において登記された法人で、国内に事業実施場所を有すること」とされており、外資系企業の日本法人も対象となります。実際に令和7年度補正事業Ⅰでは、デンマーク系風力発電大手の日本法人であるベスタス・ジャパンが浮体式洋上風力発電設備(ナセル最終組立)の案件で採択されています。

Q.同一企業が複数回採択されることはありますか?

令和6年度第一回でトヨタ自動車が水電解スタックと燃料電池スタック・モジュールの2件で別々に採択されている実績があります。ただし令和7年度補正事業Ⅰでは、令和6年度第二回・令和7年度事業Ⅲで採択済みの同一事業と判断される場合は重複申請が禁止されると明記されており、同一事業の重複申請はできません。異なる品目・事業であれば複数回の申請・採択が可能な設計となっています。

Q.補助金の交付額はどのように確定しますか?

公表されている金額は「補助金交付額(交付申請額)」であり、実際の補助金額とは異なる可能性があると採択一覧に明記されています。補助金の支払いは原則として間接補助事業終了後の精算払であり、実際に執行した対象経費に補助率を乗じた額が最終的な交付額となります。交付申請額はあくまで上限の目安として理解する必要があります。

Q.どのような審査基準で採択が決まりますか?

審査は第三者委員会による書面審査と面接審査で実施されます。主な審査項目は①基本的事項(実施体制・財務健全性・経営層のコミット)、②産業競争力強化への貢献(投資誘発効果・グリーン市場創造)、③CO2排出削減効果(ライフサイクル全体)、④民間のみでは投資判断が困難な事業か(IRR=内部収益率等の経済的・技術的基準)、⑤人材確保への取組です。賃上げ(大企業3%以上・中小企業等1.5%以上の対前年比)の表明は加点項目ですが、表明がない場合は原則交付決定が行われないとされています。

Q.採択後に生産を継続する義務はありますか?

はい。公募要領では「経済産業省がやむを得ないと認める事情が生じない限り、間接補助事業終了後5年間以上、当該製品の生産を継続すること」が要件とされています。また事業期間が3年間以上の案件については第三者委員会による中間審査が行われます。長期にわたる生産継続の義務を前提に投資計画を立案する必要があります。具体的な条件は各公募回の要領で要確認です。

Q.現在申請できる公募はありますか?

2026年8月時点で確認できる公募はいずれも受付終了しています。令和7年度補正事業Ⅱ(ペロブスカイト太陽電池)が2026年6月30日に締切となっており、新規公募の予告は各事務局サイト(gx-supplychain.jp、2025.gxsc-hojo.jp、2026.gxsc-hojo.jp)およびMETIの公式ページで随時確認が必要です。制度・要件は公募回ごとに変更されるため、最新情報を必ずご確認ください。

出典:GXサプライチェーン構築支援事業 事務局サイト(令和6年度)GXSC補助金事務局(令和7年度補正)令和7年度補正 事業Ⅰ公募要領

GXサプライチェーン補助金の関連記事

監修:松下 大(中小企業診断士/認定経営革新等支援機関)

公募要領等の一次情報に基づき作成。最終更新:2026/8/18