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設備を売る・捨てる・移す前に|補助金の取得財産の処分制限と、承認が要る場面

監修:松下 大中小企業診断士/認定経営革新等支援機関株式会社SMARTコンサルティング
最終更新:2026/7/25

結論から書きます。補助金で買った設備は、補助事業が終わった後も一定期間、承認を受けずに売る・貸す・交換する・担保に入れる・目的に反して使うことができません。根拠は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(以下、補助金適正化法)第22条で、これは事務局のローカルルールではなく法律上の義務です。判断は3ステップです。①その設備が処分制限の対象財産か(一般に、取得価格または効用の増加価格が単価50万円以上の機械・器具・備品等という基準が使われますが、線引きは制度ごとの交付規程で確認します)、②処分制限期間がまだ終わっていないか(法定耐用年数を準用して定められます)、③やろうとしている行為が承認の要る類型か。3つとも「該当」なら、実行する前に承認申請です。順番を逆にすると、交付決定の取消しと返還命令が現実のリスクになります。

結論:判断は3ステップ。対象財産か、期間内か、承認の要る行為か

設備を入れ替えたい、不要になった、工場を移転する——このときに最初にやるべきことは、下取り業者への連絡でも産廃業者の手配でもありません。次の3つを順に確認することです。 第1ステップは、その設備が「処分制限がかかる財産」に当たるかどうかです。補助事業で取得したものすべてに制限がかかるわけではなく、一定金額以上の機械・器具・備品や不動産が対象になります。実績報告のときに作った取得財産等管理台帳(取得財産等明細表)に載っている資産が、まず候補です。 第2ステップは、処分制限期間がまだ続いているかどうかです。この期間は補助事業の実施期間とは別物で、補助事業が完了した後も何年も続きます。期間が経過していれば、補助金適正化法の枠組みでは承認は不要になります。 第3ステップは、やろうとしている行為が承認の必要な類型かどうかです。売却・貸付・担保提供・目的外使用は法律の条文に明記されています。廃棄や移設は条文の文言には直接出てきませんが、多くの制度が交付規程で承認または届出の対象にしています。 この3つがすべて「該当」なら、行為の前に承認申請です。どれか1つでも外れるなら手続きは不要になり得ますが、その判定を自社だけで下さないでください。判定の材料は交付決定通知書に紐づく交付規程と、その制度の財産処分に関する案内です。判断がつかないときは、設備を動かす前に事務局へ照会し、照会日・担当者名・回答内容を記録に残すのが安全側の進め方です。

  • ① 対象財産か:取得財産等管理台帳に載っている資産か。金額基準を満たすか。不動産・建物か。
  • ② 期間内か:処分制限期間(法定耐用年数を準用して定められる期間)が経過していないか。
  • ③ 承認の要る行為か:売却・交換・貸付・担保提供・目的外使用・無償譲渡・廃棄・移設のいずれか。
  • 3つとも該当なら、実行前に財産処分承認申請。事後の報告では手当てできない。
  • 判定の材料:交付決定通知書、その公募回の交付規程、取得財産等管理台帳、事務局の財産処分に関する案内。
  • 迷ったら止める。設備を動かす前に事務局へ照会し、やり取りを記録に残す。

根拠は補助金適正化法第22条と施行令|法律が名指しで禁じている行為

処分制限のよりどころは、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第22条です。趣旨はこうです。補助事業者は、補助事業により取得し、または効用が増加した「政令で定める財産」について、各省各庁の長の承認を受けずに、補助金交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、または担保に供してはならない。ただし政令で定める場合は除く——という組み立てになっています。 ここで押さえるべき点が2つあります。ひとつは、禁じられている行為が「使用(目的に反する使用)・譲渡・交換・貸付・担保提供」と具体的に列挙されていることです。売却だけの話ではありません。遊休設備を関連会社に貸す、借入の担保として動産譲渡担保を設定する、といった行為も条文の射程に入ります。 もうひとつは、「承認を受けないで」という書きぶりです。禁止されているのは処分そのものではなく、承認を経ない処分です。正しい手続きを踏めば処分できる制度設計であり、諦める必要はありません。逆に言えば、事後に報告すれば足りる仕組みではないということです。 対象となる財産の範囲は同法施行令に定めがあり、不動産、船舶・航空機等、これらの従物、機械および重要な器具で各省各庁の長が定めるもの、その他各省各庁の長が特に必要と認めて定めるもの、という構成になっています。「各省各庁の長が定めるもの」という受け皿があるため、具体的な金額基準や品目は補助金ごとの交付規程・告示に落ちてきます。だからこそ、法律だけを読んでも自社の設備が対象かは決まらず、交付規程まで下りる必要があります。

  • 補助金適正化法第22条:承認を受けずに、目的に反する使用・譲渡・交換・貸付・担保提供をしてはならない(ただし政令で定める場合を除く)。
  • 禁じられているのは「処分」ではなく「承認を経ない処分」。手続きを踏めば処分できる設計になっている。
  • 施行令が定める対象財産:不動産、船舶・航空機等、これらの従物、機械および重要な器具で各省各庁の長が定めるもの ほか。
  • 「各省各庁の長が定めるもの」という受け皿があるため、金額基準・品目の具体は補助金ごとの交付規程で決まる。
  • 施行令には例外も置かれている(補助金の全部に相当する額を国に納付した場合/各省各庁の長が定める期間を経過した場合)。

対象になる財産の線引き|「単価50万円以上」は法律の数字ではなく交付規程の数字

実務でよく使われる基準は、取得価格または効用の増加価格が単価50万円以上の機械・器具・備品等、というものです。国の補助金で広く採用されている線引きで、中小企業向けの設備投資系の補助金でもこの水準が示されることが一般的です。ただし重要なのは、この50万円が補助金適正化法や施行令に書かれた数字ではないという点です。施行令が「各省各庁の長が定めるもの」と委ねた部分を、各制度が具体化した数字にすぎません。したがって、金額・税抜か税込か・判定の単位は、自社が交付を受けた制度の交付規程で確認してください。この記事では断定しません。 判定の単位は特に間違えやすいところです。1台で50万円に届かない機器を複数台まとめて導入した場合、機器ごとに判定するのか、一体として機能する「一式」で判定するのかで結論が変わります。生産ラインのように単体では機能しない構成機器は一式で見るのが自然ですが、これも規程と事務局の運用に従います。 建物・不動産は、金額基準にかかわらず対象とされることが一般的です。補助金で建てた工場・倉庫を売る、賃貸に出す、担保に入れる、といった行為は制限の中心にあります。効用の増加、つまり既存の建物への改修工事によって価値が上がった部分も対象になり得ます。 逆に、消耗品や単価基準に満たない備品は処分制限の対象外になります。ただし「対象外だから何をしてもよい」わけではありません。補助事業の目的に沿って使う義務、帳簿・証憑を保存する義務は別に残ります。対象外と判断した根拠も、台帳と一緒に残しておくと、後の事業化状況報告や検査で説明が効きます。

  • よく使われる基準:取得価格または効用の増加価格が単価50万円以上の機械・器具・備品等。ただし法定の数字ではなく交付規程の数字。
  • 確認すべきこと:金額水準/税抜か税込か/判定の単位(1台ごとか、一体で機能する一式か)。すべて交付規程で要確認。
  • 建物・不動産は金額基準によらず対象とされるのが一般的。改修による効用の増加分も対象になり得る。
  • 出発点の資料:実績報告で提出した取得財産等管理台帳(取得財産等明細表)。ここに載っている資産から検討する。
  • 基準未満の備品は処分制限の対象外になり得るが、目的外使用の禁止・帳簿保存義務は別途残る。
  • 対象外と判断した場合も、その判断根拠(単価・規程の該当条項)を台帳と一緒に記録しておく。

処分制限期間の数え方|法定耐用年数の準用と、耐用年数表の引き方

処分制限期間は、補助金適正化法施行令が定める「補助金等の交付の目的および当該財産の耐用年数を勘案して各省各庁の長が定める期間」として決まります。実務では、この期間を税務で使う『減価償却資産の耐用年数等に関する省令』(昭和40年大蔵省令第15号)の法定耐用年数を準用して定める運用が広く採られています。つまり、その設備の法定耐用年数を引けば、処分制限期間の見当がつきます。 耐用年数表は、探す場所を間違えると別の年数を拾います。別表第一は「機械及び装置以外の有形減価償却資産」で、建物・建物附属設備・構築物・車両運搬具・工具・器具及び備品を、資産の種類と構造・用途で引きます。別表第二は「機械及び装置」で、こちらは資産の名前ではなく『設備の種類』、つまり業種の単位で引きます。製造ラインの機械は、機械の商品名ではなく自社の製造業種の設備区分で年数が決まる、という点が独特です。自社利用のソフトウェアなどの無形資産は別表第三です。 注意点が2つあります。第一に、条文は「耐用年数を勘案して定める期間」であって「法定耐用年数そのもの」とは書いていません。制度によっては異なる年数を定めている可能性があるため、自社の交付規程・財産処分の案内で確認してください。第二に、起算日です。取得日(検収日)から数えるのか、補助事業の完了日から数えるのかは制度によって異なります。この記事では断定しません。交付決定通知書に紐づく交付規程で要確認です。1〜2年ずれると結論が変わる論点なので、社内の記憶ではなく書面で確定させてください。

  • 別表第一:機械及び装置以外の有形減価償却資産。建物・建物附属設備・構築物・車両運搬具・工具・器具及び備品を、種類と構造・用途で引く。
  • 別表第二:機械及び装置。資産名ではなく『設備の種類』=業種の単位で引く。先に自社の該当業種区分を決めてから年数を見る。
  • 別表第三:無形減価償却資産。自社利用のソフトウェアなどはここで引く。
  • 手順:①機械及び装置かどうかを決める →②該当する別表を選ぶ →③種類・構造・用途(機械は業種)で行を特定する →④年数を読む。
  • 条文は「耐用年数を勘案して定める期間」。法定耐用年数と一致するとは限らないため、制度側の定めを確認する。
  • 起算日(取得日か補助事業完了日か)は制度によって異なる。交付規程で要確認。
  • 決めた年数と起算日は、根拠となる別表の行番号とあわせて台帳に書き残しておく。担当者が代わっても再現できる。

処分の類型ごとの承認の要否|売却・廃棄・転用・譲渡・貸付・担保・移設

「処分」という言葉から売却だけを思い浮かべると、手続き漏れが起きます。補助金適正化法第22条が名指ししているのは、目的に反する使用・譲渡・交換・貸付・担保提供です。ここに、各制度の交付規程が廃棄(除却・取壊し)や設置場所の変更を加えている、という重ね方になります。 特に見落とされやすいのが3つあります。ひとつは廃棄です。「壊れて使えないから捨てた」は自然な行動ですが、条文の文言に廃棄が出てこないからといって自由にできるわけではなく、多くの制度は交付規程で承認または届出を求めています。捨ててしまった後では、状態を証明する手段が写真しか残りません。 ふたつめは移設です。工場を移転する、賃借していた建屋を引き払う、という場面で設備を運ぶだけの行為も、申請時に届け出た設置場所からの変更にあたります。これが計画変更の手続きになるのか財産処分の手続きになるのかは制度によって異なるため、事務局への照会が要ります。 みっつめは担保提供です。運転資金の借入で金融機関から動産担保を求められ、補助対象設備に譲渡担保を設定する——これは条文に明記された承認対象です。金融機関側は補助金の制約を知らないまま話を進めることがあるので、こちらから確認する必要があります。 なお、会社分割・事業譲渡・M&Aで設備の帰属主体そのものが変わる場合は、財産処分というより補助事業者の地位の承継の問題になり、別の手続きが用意されていることがあります。これも制度ごとの取扱いを確認してください。

  • 有償譲渡(売却・下取り):承認が必要。国庫納付が生じる代表例。下取りも譲渡にあたる。
  • 交換:承認が必要。補助金適正化法第22条に明記された行為。
  • 貸付(有償・無償):承認が必要。遊休設備を他社に使わせる、レンタルに回すなど。
  • 担保提供:承認が必要。借入時に補助対象設備へ譲渡担保・動産譲渡登記を設定する場面が典型。
  • 目的外使用(転用):承認が必要。申請時の用途と異なる事業に使う、補助対象外の業務に振り向けるなど。
  • 無償譲渡:承認が必要。グループ会社・関連会社への移管も「譲渡」にあたる。
  • 廃棄・除却・取壊し:条文の文言には直接出てこないが、多くの制度が交付規程で承認または届出の対象としている。故障・陳腐化でも先に捨てない。
  • 移設(設置場所の変更):工場移転や賃借物件の退去に伴う移動。計画変更と財産処分のどちらの手続きになるかは制度による。実行前に照会する。
  • 会社分割・事業譲渡・M&A:補助事業者の地位の承継として別途の手続きが必要になる場合がある。
  • いずれの類型も、承認が必要かどうかの最終判定は自社の交付規程による。この一覧は照会前の当たりをつけるためのもの。

国庫納付額の考え方|有償なら「譲渡額×補助率」、無償・転用なら「残存簿価×補助率」

承認が下りたとしても、無償で処分できるとは限りません。公表されている財産処分の承認基準では、国に納付する額の考え方が処分の類型ごとに整理されています。骨格は2つです。 第一に、有償譲渡・有償貸付の場合。譲渡額(貸付額)に補助率を掛けた額が納付額の基礎になり、交付を受けた補助金額が上限になります。高く売れれば納付額も上がりますが、受け取った補助金を超えて取られる仕組みではありません。 第二に、転用・無償譲渡のように対価を伴わない処分の場合。残存簿価相当額、つまり減価償却後の帳簿価額に補助率を掛けた額が基礎になります。取得から時間が経って簿価が下がっているほど、納付額は小さくなります。処分制限期間の終盤で簿価がほぼ償却済みなら、納付額も小さくなる方向に働きます。 補助率は交付決定通知書に記載された率です。補助率2/3で交付を受けた設備を有償譲渡するなら、譲渡額の2/3が納付額の目安になります。ただしこれはあくまで枠組みであり、最終的な納付の要否と金額は個別の承認の中で決まります。制度によっては、一定の類型を包括的に承認して納付を求めない扱いを設けている場合もあります。自社のケースがどちらに乗るかは、申請の前に事務局に確認してください。 なお施行令には、補助金の全部に相当する金額を国に納付した場合は承認を要しない、という定めもあります。全額返せば制限は外れるということですが、通常は承認申請を経るほうが負担は軽くなります。

  • 有償譲渡・有償貸付:譲渡額(貸付額)×補助率。交付を受けた補助金額が上限。
  • 転用・無償譲渡など対価を伴わない処分:残存簿価相当額(減価償却後の帳簿価額)×補助率。
  • 補助率は交付決定通知書に記載された率を使う。記憶や公募要領の上限率ではなく、自社の通知書を見る。
  • 残存簿価を主張するには減価償却明細が要る。申請前に固定資産台帳から該当資産の簿価を出しておく。
  • この計算はあくまで承認基準の枠組み。最終的な納付の要否・金額は個別の承認の中で決まる。
  • 施行令には「補助金の全部に相当する額を国に納付した場合は承認不要」という別ルートもあるが、通常は不利になる。

承認申請のタイミングと提出先|「処分の前」が唯一の正解

申請のタイミングは1つしかありません。処分を実行する前です。売買契約の締結前、引渡し前、廃棄の実行前、移設の作業前。この線を越えてから申請しても、それは事後報告であって承認申請ではありません。 提出先は、自社が交付を受けた補助金の事務局です。補助金適正化法の建て付けでは承認権者は各省各庁の長ですが、中小企業向けの補助金では事務局が窓口となり、所定の様式または電子申請システムで受け付ける運用が一般的です。様式名・提出方法・電子申請かPDFかは制度ごとに異なるため、事務局サイトの財産処分に関する案内を開いてください。 実務上の落とし穴は、審査に要する期間です。買主との引渡し日を先に決めてしまうと、承認が間に合わずに約束を破るか、承認前に引き渡して違反になるかの二択になります。相手のある取引では、契約書に「事務局の承認取得を停止条件とする」旨を入れられないか、先に検討してください。 添付書類は制度により異なりますが、処分の理由を説明する書面、対象資産を特定する情報(取得財産等管理台帳の該当部分、型式・製造番号)、金額の根拠(売買契約書案・見積書・減価償却明細)、現況が分かる写真、といった構成が典型です。必要書類は必ず自社の制度の様式で確認してください。 もうひとつ押さえておきたいのが、事業化状況報告との関係です。補助事業の完了後、一定年数にわたって事業化の状況や取得財産の状況を毎年報告する義務を課している制度があります。財産の異動はこの報告で把握されるため、処分と報告の内容が食い違うと説明を求められます。報告の年限や様式は制度ごとに異なるので、公募要領・交付規程で要確認です。

  • タイミング:契約締結前・引渡し前・廃棄の実行前・移設作業前。実行後の申請は事後報告であって承認ではない。
  • 提出先:交付を受けた補助金の事務局。様式・電子申請の可否は制度ごとに異なる。
  • 審査期間を工程に織り込む。買主との引渡し日を承認前提で先に固定しない。
  • 相手のある取引では、契約書に「事務局の承認取得を停止条件とする」旨を入れられないか検討する。
  • 典型的な添付:処分理由書、対象資産の特定情報(台帳該当部分・型式・製造番号)、金額の根拠、現況写真。
  • 残存簿価ベースの納付が想定される場合は、固定資産台帳・減価償却明細を先に準備しておく。
  • 事業化状況報告を課す制度では、処分の内容と報告の内容を必ず一致させる。年限・様式は交付規程で要確認。

災害・陳腐化・処分制限期間の経過後|例外はあるが「黙って捨てる」ではない

例外的な扱いが用意されている場面が3つあります。ただし、いずれも「手続きなしで自由にできる」という意味ではないところが重要です。 第一に、処分制限期間が経過した場合。施行令は、各省各庁の長が定める期間を経過した場合を承認不要の場合として挙げています。期間が満了していれば、補助金適正化法第22条の枠組みでの承認は要らなくなります。ただし、期間の起算日と年数の認定を自社の思い込みで済ませないでください。ここを1年読み違えると、承認不要のつもりが無断処分になります。書面で確定してから動くのが安全です。 第二に、災害等のやむを得ない事由で滅失・毀損した場合。公表されている承認基準では、こうした場合に国庫納付を求めない扱いが想定されています。ただしこれは「納付が生じない可能性がある」という話であって、事務局への手続きまで不要になるとは限りません。罹災証明、被害状況の写真、保険会社の調査資料など、事由を裏づける資料を先に確保してください。保険金を受け取る場合の扱いも制度に確認が要ります。 第三に、故障や陳腐化で使用に耐えなくなった場合。残存簿価が小さければ納付額も小さくなる方向に働きますが、それは承認の中で判断されることです。捨ててから「使えなかった」と説明しても、状態を裏づける資料が残っていません。処分前に、故障の状況が分かる写真、修理業者の見積書や修理不能の判定書、稼働記録といった証跡を揃えておいてください。手間はかかりますが、後から作れない資料ばかりです。

  • 処分制限期間の経過:施行令上、承認不要の場合として位置づけられている。ただし起算日と年数の認定を書面で確定してから動く。
  • 災害等による滅失・毀損:承認基準では国庫納付を求めない扱いが想定されている。手続き自体が不要とは限らない。
  • 災害時に先に確保するもの:罹災証明、被害状況の写真、保険会社の調査資料。保険金の扱いは事務局に確認する。
  • 故障・陳腐化:残存簿価が小さければ納付額も小さくなる方向だが、判断は承認の中で行われる。
  • 廃棄前に揃える証跡:故障状況の写真、修理見積書または修理不能の判定書、稼働記録。捨てた後では作れない。
  • 例外に当たると思ったときこそ、判断根拠を事務局に確認して記録に残す。自己判断が最も高くつく。

無断で処分するとどうなるか|交付決定の取消し・返還命令・年10.95%の加算金

結論を先に書きます。承認を得ずに処分した場合、失うのは補助金だけではありません。補助金適正化法は段階的な制裁を用意しています。 まず、補助事業者が法令や交付決定の内容・条件に違反したときは、各省各庁の長が交付決定の全部または一部を取り消すことができます。次に、取消しをした場合には、すでに交付した補助金の返還が命じられます。そのうえで、返還を命じたときは、補助金を受領した日から納付の日までの日数に応じて年10.95パーセントの割合で計算した加算金を国に納付させる、という規定が置かれています。納期日までに納付しない場合の延滞金も同じ年10.95パーセントの水準で定められています。 この数字の意味を具体化すると、受領から数年後に取消しを受けた場合、加算金は受領日まで遡って計算されるため、返還額に相当な上乗せが生じ得るということです。「売却代金より返還額のほうが大きい」という事態は十分あり得ます。加えて、補助金適正化法には第22条違反に対する罰則規定も置かれています(内容は条文で確認してください)。制度によっては、不正への対応として事業者名の公表や以後の申請制限といった措置が用意されている場合もあります。 そして現実的なのは、露見の経路です。事業化状況報告、事務局による現地確認、決算書の固定資産の増減、補助対象設備が写っていない工場の写真——処分の事実は複数の経路で表に出ます。隠し通せる前提で組み立てないでください。 すでに承認を得ずに処分してしまった場合は、放置が最悪手です。事実関係(処分日、方法、相手方、金額、残存簿価)を整理し、速やかに事務局へ申し出て指示を仰いでください。

  • 交付決定の取消し:法令・交付決定の内容や条件に違反したとき、全部または一部が取り消され得る。
  • 返還命令:取消しをした場合、すでに交付した補助金の返還が命じられる。
  • 加算金:返還を命じたときは、受領の日から納付の日までの日数に応じ年10.95パーセントで計算した加算金を国に納付。
  • 延滞金:納期日までに納付しない場合、同水準(年10.95パーセント)の延滞金の定めがある。
  • 補助金適正化法には第22条違反に対する罰則規定も置かれている。内容は条文で確認する。
  • 露見の経路:事業化状況報告、現地確認、決算書の固定資産の増減、設備の現況写真。
  • すでに無断処分してしまった場合:処分日・方法・相手方・金額・残存簿価を整理し、速やかに事務局へ申し出て指示を仰ぐ。

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よくある質問

Q.補助金で買った機械を導入から5年目に下取りに出し、新型に入れ替えたい。承認は要りますか。

その機械が処分制限の対象財産に当たり、かつ処分制限期間内であれば、下取り(有償譲渡)は承認が必要な行為です。まず取得財産等管理台帳で対象資産かどうかを確認し、次に処分制限期間の年数と起算日を交付規程で確定してください。処分制限期間が法定耐用年数を準用して定められている場合、耐用年数が8年や10年の設備であれば5年目はまだ期間内です。承認が必要なら、下取り契約の締結前に事務局へ財産処分承認申請を出します。有償譲渡なので、譲渡額×補助率(交付を受けた補助金額を上限)の考え方で国庫納付が生じ得ます。新型の購入契約を先に固めず、承認取得を織り込んだ工程で進めてください。

Q.単価50万円未満の備品なら、自由に処分してよいのですか。

多くの制度で単価50万円以上という基準が使われているため、それ未満であれば処分制限の対象外となる可能性は高いですが、自動的にそうなるわけではありません。50万円は補助金適正化法や施行令に書かれた数字ではなく、各制度が交付規程で定めた数字だからです。金額水準、税抜か税込か、1台ごとか一式かの判定単位も制度によって異なります。自社の交付規程で要確認です。また、対象外と判断できた場合でも、補助事業の目的に沿って使う義務や帳簿・証憑の保存義務は別に残ります。対象外と判断した根拠を台帳に書き残しておくと、後の報告や検査で説明が効きます。

Q.工場を移転します。設備を新しい工場に移すだけでも手続きが要りますか。

実行前に事務局へ照会してください。移設は補助金適正化法第22条の文言に直接は現れませんが、交付申請時に届け出た設置場所からの変更にあたるため、計画変更の手続きまたは財産処分の手続きの対象とされることがあります。どちらの枠組みで扱うかは制度によって異なるため、この記事では断定しません。移転先が自社所有か賃借か、事業の内容が変わらないか、といった事情でも扱いが変わり得ます。移転計画が固まった段階、つまり運送業者を手配する前に照会し、必要な様式と提出時期を確認してください。照会日と回答内容の記録も残しておいてください。

Q.処分制限期間は、設備を買った日から数えるのですか、補助事業が終わった日から数えるのですか。

制度によって異なるため、交付決定通知書に紐づく交付規程で要確認です。取得日(検収日)を起算日とする定めもあれば、補助事業完了日を起算日とする定めもあります。1年ずれるだけで「承認不要」と「無断処分」が入れ替わる論点なので、社内の記憶や他社の事例ではなく、自社の規程の条文で確定させてください。あわせて、年数そのものも確認が要ります。施行令の文言は「耐用年数を勘案して各省各庁の長が定める期間」であり、法定耐用年数と必ず一致するとは限らないためです。確定した起算日・年数・根拠条項は、取得財産等管理台帳に併記しておくと担当者交代時に迷いません。

Q.国庫納付が発生すると、いくら返すことになりますか。

公表されている承認基準の枠組みでは、有償譲渡・有償貸付は譲渡額(貸付額)×補助率で、交付を受けた補助金額が上限です。転用・無償譲渡のように対価を伴わない処分は、残存簿価相当額×補助率が基礎になります。たとえば補助率2/3で交付を受けた設備を有償譲渡するなら、譲渡額の2/3が納付額の目安です。ただしこれは枠組みであり、最終的な納付の要否と金額は個別の承認の中で決まります。制度によっては一定の類型を包括的に承認し納付を求めない扱いを設けている場合もあります。申請前に、固定資産台帳から残存簿価を出し、交付決定通知書の補助率を確認したうえで、事務局に自社ケースの扱いを確認してください。

Q.承認を取らずに廃棄してしまいました。どうすればよいですか。

放置しないでください。速やかに事務局へ申し出て指示を仰ぐのが最善です。補助金適正化法では、交付決定の内容や条件に違反したときは交付決定の取消しと補助金の返還命令があり得ます。返還を命じられた場合、受領の日から納付の日までの日数に応じ年10.95パーセントで計算した加算金の規定があるため、時間が経つほど負担は増えます。申し出の前に、処分日、処分の方法、相手方、受け取った金額の有無、対象資産の型式・製造番号、残存簿価、廃棄に至った理由と裏づけ資料(故障の写真、修理不能の判定書など)を整理してください。事実関係を正確に伝えることが、その後の扱いを決める土台になります。

出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(e-Gov法令検索)減価償却資産の耐用年数等に関する省令(e-Gov法令検索)国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし文部科学省 財産処分手続ハンドブック(内閣府 提案募集 提出資料・PDF)事業再構築補助金 財産処分について中小企業新事業進出補助金 交付規程(PDF・中小機構)経済産業省 補助事業事務処理マニュアル(PDF)

※ 本記事は公表されている一次情報に基づく一般的な整理です。制度の要件・金額・期限は公募回ごとに変わるため、申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。採択を保証するものではありません。

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監修:松下 大(中小企業診断士/認定経営革新等支援機関)

公募要領等の一次情報に基づき作成。最終更新:2026/7/25