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補助金の不正受給とペナルティ|返還・年10.95%の加算金・法人名の公表と、悪意なく踏みやすい境界線

監修:松下 大中小企業診断士/認定経営革新等支援機関株式会社SMARTコンサルティング
最終更新:2026/7/25

結論から書きます。補助金の不正受給に対する制裁は「返してください」で終わりません。補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(補助金適正化法)に基づき、交付決定が取り消され、すでに受け取った補助金の返還が命じられ、そのうえで受領日から納付日までの日数に応じて年10.95パーセントの加算金が上乗せされます。納期日までに納めなければ、さらに延滞金が加わります。制裁は金銭だけではありません。経済産業省は補助金交付等停止措置および指名停止措置の対象を、法人名つきの一覧としてウェブで公表しています。そこに載ることは、以後の公募での欠格事由になり得ます。しかも実務で問題になる事案の多くは、架空発注のような明白な不正ではなく、交付決定前の発注、無断の財産処分、実績報告の期ズレといった、悪意なく踏んでしまう境界線です。この記事では、法的な帰結を段階的に整理し、疑いを持たれたときの初動まで書きます。

結論:制裁は4層で来る。返還・加算金・交付停止・公表

補助金の不正受給を「発覚したら返せばいい」と考えている経営者は少なくありません。しかし実際の制裁は、性質の違う4つの層が重なって来ます。この4層を分けて理解しないと、リスクの大きさを見誤ります。 第一層が、交付決定の取消と補助金の返還です。これは原状回復であり、受け取った額が手元から出ていきます。設備は残りますが、資金は返します。 第二層が、加算金と延滞金です。補助金適正化法は、返還を命じられた補助金について、受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95パーセントの割合で計算した加算金を国に納付しなければならないと定めています。さらに返還命令の納期日までに納付しなかった場合は、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じた延滞金が別に課されます。返還が遅れるほど雪だるま式に増える構造です。 第三層が、行政上の措置です。経済産業省は、補助金等に関して不正な行為を行った者に対し、補助金交付等停止措置および契約に係る指名停止措置を講じ、その一覧を公表しています。この措置を受けている間は、経済産業省が所管する補助金の入口そのものが閉じます。 第四層が、公表と、それが招く取引上の実害です。法人名が載った一覧はウェブで誰でも閲覧でき、検索にも残ります。金融機関の与信審査、取引先のコンプライアンス調査、入札参加、採用の場面で、返還額をはるかに超える打撃になり得ます。 この4層は、故意の架空発注だけに適用されるものではありません。第一層と第二層は、交付決定の内容や条件に違反したと判断されただけでも到達し得ます。だからこそ、悪意の有無ではなく、手続きの事実関係で線を引く必要があります。

  • 第1層|交付決定の取消と返還命令:受け取った補助金が手元から出ていく(原状回復)
  • 第2層|加算金・延滞金:受領日から納付日までの日数に応じ年10.95パーセント。納期日を過ぎればさらに延滞金
  • 第3層|補助金交付等停止措置・指名停止措置:経済産業省所管の補助金と国の契約から一定期間排除される
  • 第4層|公表:法人名つきの一覧がウェブに残り、与信・取引・入札・採用に波及する
  • 第1層と第2層は「故意の不正」に限らず、交付決定の内容や条件への違反でも到達し得る

法的枠組み:補助金適正化法の取消・返還・加算金・徴収・罰則

国の補助金の制裁の根拠は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号。通称「補助金適正化法」)にあります。各補助金の交付規程や公募要領は、この法律の下に置かれた個別ルールです。したがって、公募要領に書かれていないから大丈夫、という読み方は成立しません。 押さえる条文の並びは次のとおりです。第17条は、補助事業者等が補助金等を他の用途に使用したとき、その他交付決定の内容もしくはこれに付した条件、または法令に違反したときに、交付決定の全部または一部を取り消すことができると定めます。ここでの「条件違反」には、実績報告や事業化状況報告といった手続き義務の不履行も含まれ得ます。 第18条は、取消をした場合にすでに補助金等が交付されているときは、期限を定めてその返還を命じなければならないとしています。「命ずることができる」ではなく「命じなければならない」という書き方であることに注意してください。一方で同条には、やむを得ない事情があると認めるときに返還の期限を延長し、または返還命令の全部もしくは一部を取り消すことができる旨の規定も置かれています。 第19条が加算金と延滞金です。返還を命じられたときは、受領の日から納付の日までの日数に応じ、当該補助金等の額(一部を納付した場合のその後の期間は既納額を控除した額)につき年10.95パーセントの割合で計算した加算金を納付します。納期日までに納付しなかったときは、納期日の翌日から納付の日までの日数に応じ、未納付額につき同率の延滞金が課されます。同条には、やむを得ない事情があると認めるときに加算金または延滞金の全部もしくは一部を免除できる旨の規定もありますが、これは行政の裁量であり、免除を前提に資金計画を組める性質のものではありません。 第20条は、返還を命じられた者について、同種の事務・事業に係る他の補助金等の交付を一時停止し、または相殺することを認めています。第21条は、返還金・加算金・延滞金の徴収について国税滞納処分の例によるとしており、任意の支払いを待つだけの債権ではありません。第22条は、補助事業により取得した政令で定める財産について、承認を受けずに交付の目的に反して使用・譲渡・担保提供・取壊しをすることを禁じています。 刑事罰も置かれています。第29条第1項は、偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた者を、5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています(刑名は2025年6月施行の刑法等改正を反映したもので、改正前の条文では「懲役」でした)。同条には、その事情を知って交付または融通をした者も同様とする規定があります。さらに同法は、補助金等を他の用途に使用した者についての罰則(第30条)、報告や検査に関する罰則、法人にも罰金を科す両罰規定を置いています。具体的な法定刑は改正され得るため、必ずe-Gov法令検索で最新の条文にあたってください。

  • 第17条|他の用途への使用、交付決定の内容・条件・法令への違反があったときは交付決定を取り消せる
  • 第18条|取消部分について既交付分の返還を命じなければならない。やむを得ない事情があるときの期限延長・命令取消の規定あり
  • 第19条|受領日から納付日までの日数に応じ年10.95パーセントの加算金。納期日超過分にはさらに同率の延滞金。免除は行政の裁量
  • 第20条|同種の事業に係る他の補助金等の交付を一時停止、または相殺できる
  • 第21条|返還金・加算金・延滞金の徴収は国税滞納処分の例による
  • 第22条|補助事業で取得した財産は、承認なく目的に反して使用・譲渡・担保提供・取壊しをしてはならない
  • 第29条|偽りその他不正の手段による交付には5年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその併科
  • 条文は改正される。率・法定刑・条番号は必ずe-Gov法令検索の最新条文で確認する

加算金は金額としてどれくらい効くのか(率と期間からの機械的な例示)

年10.95パーセントという数字は、日歩に換算すると1万円あたり3銭にあたる水準です。実感を持つために、率と期間から機械的に計算した例を示します。以下はあくまで「返還を命じられた額」×「年10.95パーセント」×「受領日から納付日までの日数÷365日」という式に数字を入れただけの例示であり、実際の請求額は、返還を命じられた範囲、日数の数え方、免除の有無によって変わります。自社の見込みを計算する用途には使えません。 式に入れてみると分かるのは、金額よりも「時間」が効くという構造です。不正や違反が発覚するのは、多くの場合、実績報告の確定検査の後か、事業化状況報告の段階か、数年後の立入検査のタイミングです。受領から発覚までに2年、そこから調査と返還命令、納付までにさらに時間がかかれば、日数はあっという間に積み上がります。返還元本が同じでも、発覚が遅いほど負担は大きくなります。 もう一点、実務上見落とされやすいのが資金繰りです。返還命令には期限が付き、その期限を過ぎれば延滞金が加算金とは別に走り始めます。そして第21条により、徴収は国税滞納処分の例によります。つまり「交渉しながらゆっくり返す」という前提は置けません。補助金で買った設備は稼働していて売れず、手元資金は投資で薄くなっている——その状態で元本+加算金を一括で用意できるか、という問いになります。 この構造を理解すると、対処の優先順位が変わります。「返還になるかどうか」を先延ばしにして様子を見るのが、金額面では最も高くつく選択肢です。

  • 計算式(例示):返還額 × 10.95% × 受領日から納付日までの日数 ÷ 365日
  • 例①:返還額500万円・365日経過 → 加算金は約54.8万円。合計約554.8万円
  • 例②:返還額1,000万円・730日(2年)経過 → 加算金は約219万円。合計約1,219万円
  • 例③:返還額3,000万円・1,095日(3年)経過 → 加算金は約985.5万円。合計約3,985.5万円
  • 上記はいずれも率と日数を機械的に当てはめた例示。実際の請求額は返還範囲・日数の数え方・免除の有無で変わる
  • 納期日を過ぎた分には、加算金とは別に同率の延滞金が走る
  • 徴収は国税滞納処分の例による。分割で悠長に返す前提は置けない

明白な不正:ここに入ったら「うっかり」では説明できない

まず、議論の余地がない領域を確認します。ここに入る行為は、金額の大小にかかわらず「偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けた」という評価に直結し、返還・加算金にとどまらず刑事罰と公表の対象になり得ます。 典型は、実体のない取引をつくることです。発注も納品もない架空の取引について請求書と振込記録だけを整える、代金をいったん振り込んで裏で返してもらう(キックバック)、実際の価格より高い金額で請求書を作らせて差額を戻す(水増し請求)。いずれも、書類の上では正常な取引に見えるように設計されている点が共通しています。だからこそ、確定検査では通帳の入出金、搬入記録、稼働記録、固定資産台帳といった複数の証跡を突き合わせて確認されます。 次に、書類そのものを作り替える行為です。見積書・発注書・検収書の日付を書き換える、相見積の体裁を整えるために依頼した業者に形式的な高値見積を出させる、決算書や賃金台帳の数字を差し替える。これらは、元になる事実が仮に軽微な手続きミスだったとしても、書き換えた時点で評価が決定的に変わります。境界を越えさせるのは事実そのものではなく、事実を書き換える行為です。 三つ目が、事業の実体がないケースです。設備を導入したことにして実際には設置していない、導入したが最初から稼働させる意思がない、申請した事業とはまったく別の事業に使う。中小企業省力化投資補助金(一般型)の公募要領は、採択後に現地調査が行われ得ることを明示しています。書類上の完結と現物の一致は、後から必ず照合され得ると考えてください。 四つ目が、申請時の虚偽です。同一経費で他の補助金の交付を受けているのに申告しない、事業計画書の作成支援者や支援報酬の記載を求められているのに空欄にする。省力化投資補助金(一般型)の公募要領は、支援者名・作成支援報酬額の記載を必須とし、虚偽の記載があった場合に不採択・採択決定の取消・補助金の返還・事業者名の公表といった措置の対象になることを示しています。

  • 架空発注・キックバック・水増し請求:書類だけ整えても、通帳・搬入記録・稼働記録・固定資産台帳の突合で照合される
  • 書類の偽造・改ざん:日付の書き換え、形式的な相見積の依頼、決算書や賃金台帳の差し替え
  • 実体のない事業:未設置、稼働させる意思がない、申請と別事業への転用。現地調査が行われ得ることは公募要領に明示されている
  • 申請時の不申告・虚偽:同一経費での他制度の受給を申告しない、支援者名・支援報酬額の欄を空欄にする
  • 共通点は「事実を書類で作り替えている」こと。軽微なミスも、書き換えた瞬間に不正の領域へ移る

悪意なく踏みやすい6つの境界線と、その段階的な帰結

相談として持ち込まれる事案の大半は、前節のような設計された不正ではありません。手続きの順序や期限を軽く見た結果、後から説明できなくなるパターンです。重要なのは、これらが最初から刑事罰の話になるわけではなく、段階を踏んで悪化するという点です。 第一が、交付決定前の発注です。多くの制度で、補助対象経費は交付決定日以降に発注・契約・納品・支払いが行われたものに限られます。納期を気にして先に発注書を出すと、その設備は補助対象経費から外れます。この段階なら「対象外になる」という損失で済むことが多い。しかし、日付を交付決定日以降に直した発注書を提出した瞬間に、前節の書類偽造の領域に移ります。 第二が、目的外使用です。適正化法は、補助事業者等が法令や交付決定の内容・条件に従い、善良な管理者の注意をもって補助事業を行い、補助金等を他の用途に使用してはならないと定め、これに違反した場合の罰則も置いています。省力化のための生産設備として申請した機械を別事業の主力に使う、申請した拠点とは別の拠点へ移設する、といったケースが該当し得ます。 第三が、無断の財産処分です。第22条により、処分制限期間中は承認なく売却・譲渡・交換・貸付・担保提供・取壊し・目的外使用ができません。事業が計画どおりに進まず設備を売った、資金繰りのために担保に入れた、廃業に伴って処分した——いずれも動かす前に承認が要ります。順番を逆にすると取り返しがつきません。 第四が、実績報告の期ズレです。補助事業期間内に発注から検収・支払いまでが完了している必要があります。納品が間に合わないときに検収日だけ期間内にする、支払実績を作るために先行して振り込む、といった処理は、確定検査で通帳と搬入記録の突合により露見します。 第五が、身内企業・関係会社からの調達です。役員が兼任している会社、資本関係のある会社、親族が経営する会社からの調達は、それ自体が一律に禁止とは限りませんが、多くの制度で利益相当分の排除や相見積の実効性の観点から厳しく見られます。グループ内で見積を回して価格をつくれば、水増し請求と評価され得ます。 第六が、事業化状況報告(効果報告)の未提出です。報告の提出は交付決定に付された条件として位置づけられており、条件違反は第17条の取消事由になり得ます。設備は手元に残り、補助金だけを加算金つきで返す、という最も割に合わない結末になり得る類型です。

  • ① 交付決定前の発注|第1段階:対象経費から除外される → 第2段階:日付を直した書類を出せば偽造として不正の領域へ
  • ② 目的外使用|申請した用途・拠点と違う使い方。適正化法は他の用途への使用を禁じ、罰則も置いている
  • ③ 無断の財産処分|第22条。売却・譲渡・交換・貸付・担保提供・取壊しは、動かす前に承認を得る。事後報告では取消・返還の対象になり得る
  • ④ 実績報告の期ズレ|検収日だけ期間内にする、支払実績を作るために先行振込。通帳・搬入記録との突合で露見する
  • ⑤ 身内・関係会社からの調達|一律禁止とは限らないが、利益排除と相見積の実効性で厳しく見られる。グループ内で価格を作れば水増し扱い
  • ⑥ 事業化状況報告の未提出|提出は交付決定の条件。不作為が取消・返還・加算金に接続し得る
  • 6つに共通する分岐点は「事務局に先に相談したか」。相談は手続き、隠蔽は不正という差になる

公表という制裁:法人名つきの一覧が与信と取引に効く

金銭的な制裁より重い、と経営者が後から気づくのが公表です。経済産業省は、補助金等に関して不正な行為を行った者等に対する補助金交付等停止措置および契約に係る指名停止措置の一覧を、法人名を含む形でウェブで公表しています。措置の種類、措置の期間、措置の事由が記載され、誰でも閲覧できます。 措置の中身は2つに分かれます。補助金交付等停止措置は、一定期間、経済産業省が所管する補助金等の交付を受けられなくするものです。指名停止措置は、国の契約における指名の対象から外すものです。措置の期間は事案ごとに定められるため、年数を一般化することはできません。自社に関係する可能性がある場合は、公表されている一覧そのものを確認してください。 実害は、措置の期間内にとどまりません。第一に、PDFで公表された文書はウェブ検索の対象になり、法人名で検索したときに残ります。第二に、金融機関の与信審査では、コンプライアンス上の事象として確認され、既存の借入の条件見直しや新規融資の判断に影響し得ます。第三に、大企業や公共機関との取引では、取引先のサプライヤー審査や入札参加資格の確認で問われます。第四に、採用や人材の定着にも影響します。返還額が数百万円でも、失われる取引が年商規模で効いてくる、という逆転が起こり得ます。 さらに、公表は経済産業省の一覧に限りません。各補助金の事務局も、交付決定の取消や不正の認定に関するお知らせを公表することがあります。省力化投資補助金(一般型)の公募要領も、虚偽記載等に対する措置として事業者名の公表を挙げています。つまり、制度側・省庁側の複数のチャネルで情報が出る構造になっています。 この記事では特定の事業者名には触れません。しかし、公表されている一覧を一度自分の目で見ておくことは、社内で「これくらいなら」という空気が生まれたときの、最も効く歯止めになります。

  • 補助金交付等停止措置:一定期間、経済産業省が所管する補助金等の交付を受けられなくなる
  • 指名停止措置:国の契約における指名の対象から外れる
  • 一覧には法人名・措置の種類・期間・事由が記載され、誰でも閲覧できる。期間は事案ごとに定められる
  • 実害①:ウェブ検索に残る。措置期間が終わっても記録は消えない
  • 実害②:金融機関の与信審査、既存借入の条件見直し、新規融資の判断
  • 実害③:取引先のサプライヤー審査・入札参加資格・大手との継続取引
  • 各補助金の事務局も交付決定の取消等を公表することがあり、情報の出口は1つではない

以後の公募での欠格事由になり得る:省力化投資補助金は公募要領で要確認

公表と交付停止措置が効いてくる最大の場面が、次の公募です。補助金の公募要領には、補助対象外となる者(欠格事由)を列挙した章が置かれるのが一般的で、そこには、経済産業省から補助金交付等停止措置または指名停止措置を受けている者、虚偽の申請を行った者、法令違反等により処分を受けた者、反社会的勢力に該当する者、といった類型が並びます。したがって、一度措置の対象になると、その期間、経済産業省所管の補助金全体への入口が閉じ得ます。返還と加算金は一度きりの支出ですが、欠格は将来の投資機会を継続的に奪います。 ここで、正直に書いておくべきことがあります。中小企業省力化投資補助金(一般型)の第7次について、欠格事由の対象期間や範囲(本人だけか、役員個人も含むか、グループ会社まで及ぶか)が前回公募から見直されたかどうかは、本記事の執筆時点で一次情報にあたって確認することができませんでした。中小企業庁は2026年6月5日付で第7回公募の公表を行っており、公募要領も事務局サイトで公開されています。見直しの有無と具体的な内容は、必ずご自身で最新の公募要領を開いて確認してください。この記事の記述を根拠に判断しないでください。 確認は難しくありません。公募要領のPDFを開き、目次から「補助対象者」「補助対象外となる者」「申請に当たっての注意事項」「不正行為等に対する措置」といった章を探し、本文をキーワードで検索します。読むべきは3点です。第一に、どの行為が欠格に当たるか(措置を受けていること自体か、処分を受けたことか、申請内容の虚偽か)。第二に、対象期間(申請時点で措置期間中か、過去何年以内か)。第三に、対象範囲(申請法人本人か、代表者・役員個人か、親会社・グループ会社まで含むか)。この3点は制度ごと・公募回ごとに違い、しかも改定されます。 過去に処分歴があるかもしれない、役員個人に懸念がある、という場合は、申請作業を進める前に事務局へ照会してください。申請してから欠格が判明すると、審査の労力がすべて無駄になるだけでなく、記載の仕方によっては虚偽申請と評価されるリスクを負います。

  • 一般に公募要領が挙げる欠格の類型:交付等停止・指名停止措置を受けている者、虚偽申請を行った者、法令違反等で処分を受けた者、反社会的勢力に該当する者
  • 省力化投資補助金(一般型)第7次で欠格事由の対象期間・範囲が見直されたかは、本記事では一次情報で確認できていない。必ず最新の公募要領で確認する
  • 確認手順①:公募要領の目次から「補助対象者」「補助対象外となる者」「不正行為等に対する措置」の章を開く
  • 確認手順②:本文を「交付等停止」「指名停止」「不正」「法令違反」「虚偽」で検索する
  • 確認手順③:どの行為が欠格か/対象期間は何年か/対象範囲は法人だけか役員・グループ会社まで及ぶか、の3点を読む
  • 懸念がある場合は、申請作業に入る前に事務局へ照会する。申請後の判明は労力の全損に加え、記載次第で虚偽申請のリスクを負う

疑いを持たれたとき・自分で気づいたときの初動

結論を先に書きます。気づいた側から先に言う。これが、金銭面でも法的評価の面でも、ほぼ常に最善です。 理由は制度の構造にあります。適正化法には、やむを得ない事情があると認めるときに返還の期限を延長し、または返還命令の全部もしくは一部を取り消すことができる規定、および加算金・延滞金の全部もしくは一部を免除できる規定が置かれています。いずれも行政の裁量であり、自主的に申し出れば免除される、という約束ではありません。しかし、事務局の調査で発覚した場合と、自ら申し出て是正した場合とで、事実関係の評価が同じになるとは考えにくい。加えて、時間が経つほど加算金の日数は積み上がります。早く動くこと自体に金銭的な意味があります。 動き方は次の順序です。まず、事実関係の時系列を自分でつくります。いつ、誰が、何を、どの書類に基づいて行ったか。記憶ではなく、発注書・検収書・通帳・メールの日付で並べます。次に、証憑を保全します。ここが最も重要です。書類の後付け作成、日付の遡及、担当者間での口裏合わせは、絶対にしてはいけません。仮に元の問題が「交付決定の3日前に発注してしまった」という軽微なものでも、書類を作り替えた瞬間に「偽りその他不正の手段」の評価に移り、刑事罰と公表の領域に近づきます。是正可能な失敗を、是正不能な不正に変えてしまうのが、この一手です。 そのうえで、事務局の問合せ窓口に連絡します。口頭のやりとりだけで終わらせず、メールなど記録の残る形にしてください。連絡の前に、自社の交付決定通知書から制度名と公募回を特定し、該当する交付規程・公募要領の条項を自分で開いておくと、話が具体的になります。「うちのこの処理は、要領のこの条項に照らして問題があるか」という聞き方ができれば、回答も具体的になります。 最後に、専門家の使い分けです。手続きの是正や書類の作り直しは、支援を受けた認定経営革新等支援機関や顧問税理士と進められます。一方、金額が大きい、意図的な行為が疑われている、刑事罰の可能性が視野に入る、という段階では、早い時期に弁護士に相談してください。事務局への説明の内容が、後の評価を左右します。

  • やること①:事実関係の時系列を、記憶ではなく発注書・検収書・通帳・メールの日付で作る
  • やること②:証憑を保全する。原本・電子データをそのまま残す
  • やること③:事務局の問合せ窓口へ連絡し、記録の残る形(メール等)でやりとりする
  • やること④:交付決定通知書から制度名と公募回を特定し、該当する交付規程・公募要領の条項を開いてから相談する
  • やること⑤:金額が大きい、意図が疑われている場合は早期に弁護士へ。手続きの是正は支援機関・顧問税理士と
  • 絶対にやってはいけないこと①:書類の後付け作成・日付の遡及・数字の差し替え
  • 絶対にやってはいけないこと②:関係者間の口裏合わせ、証憑の破棄
  • 絶対にやってはいけないこと③:様子を見て放置する。加算金の日数はその間も積み上がる

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よくある質問

Q.悪気はなく、交付決定の前に発注してしまいました。不正受給になりますか?

その事実だけでは、通常は不正受給ではなく「補助対象経費に該当しない」という扱いの問題です。多くの制度で補助対象経費は交付決定日以降に発注・契約・納品・支払いが行われたものに限られるため、その経費が対象から外れ、補助金額が減ることになります。問題が不正に転じるのは、日付を交付決定日以降に直した発注書や契約書を作成して提出した場合です。この瞬間に、書類の偽造として「偽りその他不正の手段」の評価に近づきます。事実は変えられませんが、扱いは相談で変わり得ます。気づいた時点で事務局に申告し、対象経費から外す処理で済ませるのが最も損失の小さい選択です。

Q.加算金は具体的にいくらになりますか?

補助金適正化法は、返還を命じられた補助金について、受領の日から納付の日までの日数に応じ、年10.95パーセントの割合で計算した加算金を納付すると定めています。率と日数を機械的に当てはめると、返還額1,000万円で受領から納付まで2年(730日)なら加算金は約219万円、3,000万円で3年(1,095日)なら約985.5万円という計算になります。ただしこれはあくまで式に数字を入れた例示です。実際の請求額は、返還を命じられた範囲、日数の数え方、やむを得ない事情による免除の有無で変わります。さらに、返還命令の納期日を過ぎた分には同率の延滞金が別に走ります。自社の見込み額は、必ず事務局の通知に基づいて確認してください。

Q.補助金で買った設備を、事業がうまくいかず売却したい。事後報告ではだめですか?

動かす前に承認を得てください。補助金適正化法第22条は、補助事業により取得した政令で定める財産について、承認を受けずに交付の目的に反して使用し、譲渡し、担保に供し、または取り壊すことを禁じています。売却・譲渡・交換・貸付・担保提供・廃棄・目的外の転用は、処分制限期間中は事前の承認が必要です。無承認で処分した場合、交付決定の内容や条件に違反した使用と評価され、交付決定の取消・返還命令・加算金の対象になり得ます。承認を得た場合でも、残存簿価相当額等の国庫納付を求められることがあります。資金繰りが逼迫していても、順序を逆にしないでください。

Q.不正が認定されると、社名は必ず公表されますか?

「必ず」と断定はできませんが、公表される仕組みが実在します。経済産業省は、補助金等に関して不正な行為を行った者等に対する補助金交付等停止措置および契約に係る指名停止措置の一覧を、法人名・措置の種類・期間・事由を含む形でウェブに公表しています。また、各補助金の事務局も交付決定の取消や不正の認定に関するお知らせを公表することがあり、省力化投資補助金(一般型)の公募要領は虚偽記載等に対する措置として事業者名の公表を挙げています。どの事案がどのチャネルで公表されるかは、事案の性質と各制度の定めによります。公表の有無や範囲を事前に見込むことはできない、と考えて行動してください。

Q.過去に不正の認定を受けると、もう補助金には申請できませんか?

永久に申請できなくなるとは限りませんが、一定期間は難しくなります。補助金交付等停止措置を受けている間は、経済産業省が所管する補助金等の交付を受けられません。加えて、公募要領の欠格事由に「交付等停止措置または指名停止措置を受けている者」「法令違反等により処分を受けた者」といった類型が置かれるのが一般的です。措置の期間は事案ごとに定められ、欠格の対象期間や範囲(法人本人か、役員個人か、グループ会社まで及ぶか)も制度ごと・公募回ごとに違います。中小企業省力化投資補助金(一般型)第7次でこれらが見直されたかは本記事では確認できていないため、必ず最新の公募要領の該当章を開き、判断がつかなければ申請前に事務局へ照会してください。

Q.申請代行業者に任せていて、虚偽の内容が書かれていました。責任は誰にありますか?

業者に任せたことを理由に、申請者の責任が当然に免れるとは考えないでください。中小企業省力化投資補助金(一般型)の公募要領は、申請者本人が内容を理解・確認したうえで自身が申請することを求め、事業計画書作成支援者の氏名・作成支援報酬額の記載を必須としています。記載を怠ったり虚偽の内容を記載したりした場合は、不採択・採択決定の取消・補助金の返還・事業者名の公表といった措置の対象になり得ることが示されています。支援者名の非記載を求める業者や、著しく高額な成功報酬を請求する業者は不適切とされています。提出前に、自分で全ページを読んで事実と合っているかを確認する。これは形式論ではなく、後の責任の所在に直結します。

Q.自分から事務局に申し出ると、かえって不利になりませんか?

調査で発覚するのを待つほうが不利になる、と考えるのが実務的です。理由は3つあります。第一に、補助金適正化法には、やむを得ない事情があると認めるときに返還の期限を延長したり返還命令の全部・一部を取り消したりできる規定、加算金・延滞金を全部または一部免除できる規定が置かれています。行政の裁量であり免除の約束はできませんが、自主的な是正はその判断材料に関わり得ます。第二に、加算金は受領日から納付日までの日数で計算されるため、時間の経過そのものが金額を増やします。第三に、放置している間に書類の整合をとろうとして手を加えると、是正可能な失敗が是正不能な不正に変わります。連絡は早く、証憑はそのまま。この2つを守ってください。

出典:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(e-Gov法令検索)経済産業省 補助金交付等停止及び契約に係る指名停止措置一覧経済産業省 不正受給の認定について事業再構築補助金 事務局からのお知らせ(交付決定取消等)中小企業庁 中小企業省力化投資補助金(一般型)第7回公募の公表中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領経済産業省 補助事業事務処理マニュアル(一覧)

※ 本記事は公表されている一次情報に基づく一般的な整理です。制度の要件・金額・期限は公募回ごとに変わるため、申請時は必ず最新の公募要領をご確認ください。採択を保証するものではありません。

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監修:松下 大(中小企業診断士/認定経営革新等支援機関)

公募要領等の一次情報に基づき作成。最終更新:2026/7/25